山ほどある育児書の中で最高におすすめの一冊「育児の百科」
初めての妊娠や出産で迷ったとき、ちょっと手の届くところに置いておくと絶対に役に立つ育児書の話です。
育児書なんてたま○クラブひよ○クラブで十分じゃないか、という人もいるかもしれません。写真たっぷり図解つきであれやこれや載せてる育児書もあると思います。
そんな本がたくさんあると逆に「どれがいいんだろう」と悩むこともあると思います。これからパパ、ママになる方に僕が「これは究極の育児書」と何のためらいもなく言える本はこれ。故松田道雄先生の「育児の百科」です。
漫画図解たっぷりで可愛い本を想像している方には申し訳ないのですが、この本は活字ばかりです。本当にみっちり活字で埋められてます。全部読もうとすると恐ろしいほどのページ数です。それでもこの本を勧める理由はなにか。
それは「私がこの本で育てられたから」です。ウチの実家にはこの初版本がありました。姉と僕を育てるにあたって父と母はこの本を参考にしながら子育てをしたんだと思います。
この本の中に出てくる理想の父親、母親の姿がウチの父親、母親に重なるから(褒めすぎですね)そして自分は…親としての力量の無さに恥ずかしくなります。
著者の松田道雄さんとは
そもそも著者の松田道雄さんとはどういう方なのかというと。
1908年に代々医者の家に生まれ、生後育った京都で当時の京都帝国大学(今の京都大学医学部)に入り小児結核の研究をします。その後役所などで結核に関する仕事などを続けた後「小児の慢性肺結核の発生に関する研究」により医学博士の学位を得ることになります。
大日世界大戦ではビルマに派遣されそうになるも国内の結核病院で医師となり、戦後には民間病院の小児科医を経て小児科として開業します。1967年に小児科医を辞め執筆活動を始め、「育児の百科」を始めとする育児関連の著書を書いたとされます。1998年6月に逝去。
ちょうど私が生まれたのが1970年ごろなので、ちょうど私の両親は「育児の百科」が発売されて間もなく手にとったのだと思います。
私が「育児の百科」をオススメする理由とは
さて、この本をオススメする理由というのは「育児の百科」の中身にあります。例えば始めて親になる人達に向かって故松田先生はこうやって書いてくれているのです。
自分は人間ができていないから、赤ちゃんをそだてる資格がないと思うのにも賛成できない。人間は完成するものでないし、完成に近づいたにしても、そのころには子どもをそだてられない。だが親になることは、人間を完成に近づける機会であることにまちがいない。子どもの側からすれば、あまり自信のある親は、よい親ではない。子どもといっしょに人生を探求し、いっしょにそだってくれる親がいい。
ああ、じゃあ僕でいいんだ。そんな感じでこの本は進んでいきます。
今売ってるのは3冊の文庫本。5ヶ月まで、1歳半まで、1歳半以上と赤ちゃんの年齢で分けられています。その月齢の時にそのページだけを読んだらいいだけなのです。それも困ったときにその項目を探せるようになっています。時間があるときにぱーっと流し読みしておくと、実際に何かあったときにそのページがあったことだけを思い出せたらバッチリです。
本来「~なときは~したらいい」的なものが育児書ですが、この本は違います。
おちつきのない子、という文章があります。
集団行動のできることを、子どもの発達の指標のように思って、教室で集団の統一行動ばかりやらせる先生にあたると、元気のいい子は異常児にされる。ことに子どもがぶきっちょで、服をうまくぬげなかったり、はさみが使えなかったりすると、いっそうにらまれることになる。
設備と人手がないから一斉保育をしてるだけ、器用不器用を発達の指標に使うなと怒ってるわけです。まさにそういう子どもを育ててる親にはこんな嬉しい文章はありません。体が大きめで逆にすこし不器用だった長男のことを思い出すとちょっと涙がでます。そんな彼は今、身長は180cm近く、理系の大学に進もうとバリバリ勉強(してほしい)高校生です。
その後にもう少し続きます。
学者をあつめた集会で聴衆の席におかれると、多才有能の人ほど、貧乏ゆすりをしたり、パイプをいじりまわしたりしている。それはエネルギーのある人の宿命みたいなものだ。
おちつきのない子に、おちつかそうと思って静座をさせたりするのはかわいそうだ。まして精神安定剤をのませたりするのは、天分を殺すようなものだ。
親というのは「自分の子供が平均レベルに足りてるのか、足りていないのか」がすごく気になります。身長体重から知恵の発育、歯の生え始め、ハイハイができる月齢から話し始めるまで、話し始めたら始めたで次はあいうえお・・・きりがありません。
でも松田先生はそれらひとつひとつに「子供はそれぞれ違う」とやさしく、時に厳しく言い聞かせるように文章を連ねていきます。月齢がどのくらいで、どんな症状が出たのか、その時はどんなものが考えられて、どんな行動が望ましいのか。父親と母親の横に寄り添って一緒に育児をしてくれる感覚です。
それを妊娠してから出産、心配なこと、育児、病気、いろんなことをコラムのように数ページにまとめながら「大丈夫、大丈夫」と書き連ねてくれているのが「育児の百科」です。記憶する必要もありません、気になった時に気になった事を索引できるように巻末には「年齢、気になること」で引ける索引などもあったりします(定本版)
うちにあるのはこれです。1冊にまとまっていますがめちゃくちゃ重いです(笑)上記引用もその中からさせていただきました。
この本を隅まで完読する必要はない、ただ記憶にあればいい
何度も言いますが、すべてのページを暗記しろというものではありません。子供を育てていくうちに気になること、迷うこと、疑ってしまうこと、心配になることというのは子供が生まれてからいつまでもいつまでも本当に続きます。
- 熱が出た
- 鼻水の色がおかしい
- 手を痛そうにしている
- 泣き止まない
年齢によって、月齢によって、性別によってタイミングによって対応もさまざま。でもたくさんの赤ちゃん、子供を見てきた松田先生だからこそできるアドバイスがこの本には一杯入っています。そしてそれがパパ、ママにとっての力強い教科書になります。興味がある方は是非本屋さんに。僕はこの1冊で本当に育児書は十分だと思っています。
子供が生まれた友達へのプレゼントなどにも最適ですよ!