近江商人とは?日本経済でキラリと光る商売の教え

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近江を制するものは天下を制する

僕が住んでいるのは滋賀県です。
面積のほとんどを琵琶湖に奪われているので、移動というのはほとんどが船です。風が強くて波が荒れている日は学校が休みになるし、夜になると真っ暗になるので懐中電灯は必需品です。でもそういう滋賀県を僕は大好きです。

というのは冗談です。

最近はテレビ番組などのおかげで知名度が上がってきましたが、滋賀県の面積のうち琵琶湖はほんの1/6しかありませんし、JRは琵琶湖のぐるりを走っていますし、名古屋方面、北陸方面、そして京都大阪方面、三重県へと繋がっています。高速道路も然り、北陸道、名神高速、京滋バイパスから奈良、和歌山方面へと交通のアクセスもすごくいい。交通の要所として重要視されていたのはかなり昔からのことで、滋賀県(近江)を制するものは天下を制するとはよくいったもの。

次男と滋賀県についての会話をしていると「滋賀県ってなんにもないよな、琵琶湖とか琵琶湖とか琵琶湖しか」と言うもんですから、つい

  • 日本に約5万あるお城のうち約1300城は滋賀県にある
  • 君が生活している場所からほんの数百メートル行ったところにもお城
  • ちなみに織田信長に攻められて降伏、信長が作った楽市楽座の一つを与えられた

蓮如・道西、信長と金ヶ森

そんな話をしていたわけです。歴史を学ぶのはどこでもできますからね。地元の歴史を学ぶことから広がっていくと世界の歴史に繋がりますから。

日本中に進出していった近江商人たち

他になにか滋賀県で有名なものはないのか、というので思い出したのが近江商人。滋賀県の五個荘あたりを発祥とする商人で、日本中を歩きまわり行商をおこない、京都や大阪、東京などに腰を下ろして会社を大きくした人が沢山。

伊藤忠、丸紅、住友、トーメン、兼松、ヤンマー、セゾン、東レ、武田薬品、日本生命・・・なかなかそうそうたる大会社ですよね。

そういえば愛知県豊田市から世界へ飛び立ったトヨタ自動車の創業者、豊田利三郎さんは滋賀県彦根の出身、京都で有名なワコールも塚本さんは神崎郡の出身。エアバッグの訴訟問題で大きく揺れたタカタも滋賀県から出た大企業ではあるけど・・・目、つむっておきましょうかしばらく。

ある意味、経済という天下を制するまではいかないですけど、経済界にしっかりと根をおろし踏ん張ってる会社が多いのは近江商人の歴史や考え方などが創業者の心にあったからかなと思ったりするんです。

じゃあ、近江商人っていったいどんな人達でどんな歴史を持ち、どんな事を考えてきたのかを調べながら書いてみたいと思います。

近江商人っていつごろのどんな人達か

三方よしを世界に広める会

近江商人の起源は鎌倉時代くらいまで遡ることが出来るようですが、近江商人の名が広まったのは戦国時代、先ほどちょっと触れた戦国時代頃から。

  • 公家の時代 奈良~平安時代
  • 武家の時代 鎌倉~戦国時代
  • 商人の時代 戦国時代~

大きく分けるとこんな感じかも。公家や武家が政治をする時代が終わりが見え、江戸時代という平穏な時代が来る前には経済力が軍事力、政治力を生み出す元になり、政治よりも経済が発展していくわけで、楽市楽座などにみられる自由商業が各地に広がっていくんです。

そんな中、交通の要所近江から出て行った商人たちは商才を存分に発揮して大いに業績を伸ばし、大阪や京都、江戸で店を構えて現在に通じる大企業になったところも。でも、同じように日本中各地から行商の人たちは出てくるわけで。日本の三大商人というのは下の3つ。

  • 大阪商人
    商は笑にして勝なり。
    商いは飽きない
    損して得とれ
    熱血かつユーモラスでひたむきなイメージですよね。
  • 伊勢商人
    近江泥棒、伊勢乞食(手堅い商売が得意)
    伊勢神宮参りの参拝者から全国の情報を得るシステムづくり。
    三井、三越、ライフ、イオンなど。会社名を見るとなんだか納得がいきます。
  • 近江商人

さて、近江商人の特徴というのはどこにあったかが一番おもしろいところです。

売り手よし、買い手よし、世間よし

近江商人を知っている人なら「ああ、近江商人といえば三方良し(さんぽうよし)」やなって言うでしょう。

三方良しとは「売り手よし、買い手よし、世間よし」のことを言うんですが、近江商人の商売の基本的な方針がこの言葉に凝縮されているわけです。

【売り手よし】とは売る側(近江商人)がしっかり儲けること。単に安売りするのではなく、利益を考えて「正しい値段で少しでもよい商品を売る」こと。行商というのは一回だけの商売ではなく、何世代にもわたって商売を続けていくこと。嘘をついたり不当な値段を付けて一回だけ暴利を得るわけでなく、正々堂々と商売をしてまたこの人から買いたい、と思われるような信頼を得られる売り手になること。

そしてもう一つ大事なのは「自分の会社を潰さない」こと。儲からず潰れてしまえば結局はお客様(買い手)に迷惑がかかる。しっかり自分の会社を守りながら商売をしていくこと。

【買い手よし】は顧客の満足。良い物を良い値段で買えること。信頼のおける売り手から間違いのない商品を買うこと。インターネットで商品のレビューが見れたり、Amazonでセール品を買えるのは現代のいいところ。当時のような不確かな情報の中から商品を買うというのは売り手を信頼できることが第一条件だったんじゃないかと思います。

【世間よし】近江商人は利益を自社で抱え込むだけでなく、公共事業や地域の活性のために投資をしたことが知られています。商売は自分たちだけのためではなく、顧客のためであり自分たちが生きている社会のためにあるという発想。

Win-Winという発想がありますけど、これは売り手買い手双方にメリットがある方法手法を考えようというもの。しかしここには世間という目がありません。じゃあたとえば「賄賂を渡して公共事業の入札を単独受注」する業者と公務員でも悪く言えばWin-Winなんですよね。世間よしというのはとても大事な考え方なんだと思います。

ここで近江商人の流れを組む伊藤忠商事のホームページから。

www.itochu.co.jp

伊藤忠商事は、「企業も社会の一員であり、良き企業市民として社会と共生し、事業活動を通じて社会の期待に応えていかなければ、その持続可能性を保つことができない」ということを強く認識しています。そして、CSR(Corporate Social Responsibility)とは持続可能な社会へ向けて、企業が事業活動を通じてどのような役割を果たしていくのかを考え行動していくことであると考えています。この考え方は、創業者の伊藤忠兵衛が事業の基盤としていた近江商人の経営哲学「三方よし」の精神につながるものでもあります。真のグローバル企業として多様な価値観を理解し、社会の期待に応え、社会から必要とされる企業であり続けることが、当社の使命であると考えています。

「三方よし」と伊藤忠商事のCSR | 伊藤忠商事株式会社

そう、現在の企業で言うまさにCSR(企業の社会的責任)と言えますよね。

近江商人十訓なるものの存在?

ネットで見かける近江商人十訓なるものがあります。

一、商売は世のため、人のための奉仕にして、利益はその当然の報酬なり
二、店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何
三、売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる
四、資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし
五、無理に売るな、客の好むものも売るな、客のためになるものを売れ
六、良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり
七、紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ
八、正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ
九、今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ
十、商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ

これ、出典がまったく見つからず困っていたのですが、調べてみたところすべて松下幸之助さんの言葉でした。近江商人の言葉ではありませんのであしからず。

近江の千両天秤

近江商人を表わすときによく長い天秤棒を持った旅人風の姿を見かけます。

天秤棒1本で商売をする商売魂のたくましさと同時に、千両稼いでも初心を忘れず商売に打ち込もうという教訓も兼ねているんだとか。

今や時代は変わってスマホ一台、パソコン一台で世界を駆け巡ることができるようになりましたけど、逆に数字の桁の打ち間違い、入力ミスで大惨事になるようなことも簡単に起きてしまうようになりましたよね。以前Amazonのアイリスオーヤマ商品が大炎上してましたが。

blog.livedoor.jp

天秤棒で商いをしておけばこんなことにならなかっただろうに・・・。

商売の手法が電話になろうがネットになろうが最後の最後向こうには人がいて商売って成り立ってます。横柄にならず、消極的にならず、「正々堂々と商売ができる、生きていける」人でありたいと思います。

こういうの、商売じゃなくても生きていくうちで学ぶことが多いんじゃないかなと思います。